⑪ 楽器本体の非対称なデザイン ~非対称性とカウンターバランス~

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実は最近まで、わたしも楽器は対称なデザインのほうが良いと思っていました。
フォノグラムで音を合わせて作っていく方法では、共鳴版を対称に作ることが困難です。
自分の音を聞く能力が高くなれば、この問題は解消されると思っていたのですが、
弦張力の違いによる応力のアンバランスに気がついたときに、
決定的にそう考えるのは間違いだと気がついたわけです。

フォノグラムによる楽器製作法において、
一番重要なのは楽器のアウトラインのデザインです。
なぜならば、アウトラインが決定されれば、
内部の曲面の隆起は自動的に決まってしまうからです。
つまり、楽器本体のカウンターバランスを考慮したデザインは、
アウトラインをどのように非対称するか、ということに還元されてしまうのです。
ここで少し、アウトラインと、楽器の曲面の隆起のデザインについて考えてみます。

アマティーの楽器と、ストラディバリの楽器は、
その共鳴版の隆起から、見分けがつくものです。
(アマティーは、ストラディバリのお師匠さんです。)
フォノグラムでアマティーの楽器を調べますと、
楽器の隆起のデザインが、等音面で出来ていません。
アマティーは、まだ観念的に彫っていたと思われるのです。
アマティーのアウトラインを模写し、内部の隆起を等音面で決定しますと、
ほとんど、ストラディバリの楽器のような「感じ」になります。
つまり、ストラディバリの楽器は、等音面で出来ている可能性が高いというわけです。
フォノグラムを知っていたかどうかは別として、意識的にしろ、無意識的にしろ、
音を聞きながら彫っていたのは、間違いがなさそうなのです。

ガルネリやシュタイナーなどのアウトラインでも同様の実験をしましたが、
等音面で削って、元のモデルと同じような曲面になったものは、
ストラディバリとガルネリでした。
gf5_20120824181002s(アウトラインはガルネリ、内部の隆起は等音面、ほぼ同じフォルム。)

ちなみに、シュタイナーは全然違う隆起になってしまいました。
utigatas(アウトラインはシュタイナー、それによって決まる等音面は、
シュタイナーのものとは似ても似つかない。)

話を元に戻します。
楽器本体のデザインは、アウトラインを決定すれば、
内部の曲面は自動的に決まってしまうことを見てきました。
考えたいのは、弦張力の違いからくる応力のカウンターバランスを作るために、
楽器本体のデザインをどう作るか、ということです。
そしてそれは、楽器のアウトラインさえ考えれば良い、ということです。
アウトラインをどのように非対称にしていくかは、昔の楽器を調べて、
傾向を調べていけばいいと思います。
これはカウンターバランスの主要項にあたる部分なので、
明らかな歪みの方向があるはずです。