盲目の幾何学者 1

盲目の幾何学者4

ここに盲目の幾何学者がいます。
われわれのように、 円や三角形という形状を
視覚的に見たことがありません。

数学において、円(えん)とは

平面(2次元ユークリッド空間)上の、ある点 O からの距離が
等しい点の集合でできる曲線のこと

をいいます。

われわれは距離が等しいということを
どのようにして獲得したのだろうかということを考えて見ます。

それは、なにか長さのある棒のようなものを
視覚的に比べることによって、獲得するようなものだと思われます。
それがあって初めて、コンパスのような道具も生み出され
われわれはその道具に信頼を寄せることが出来るのです。
目の見えるわれわれには、当たり前のことです。

さてここで盲目の幾何学者が
距離という概念どのように獲得していくのか
を考えてみたいと思います。

(上で説明したとおり、コンパスは視覚があって初めて信頼性のおける道具なので
ここでは、コンパスの使用はひとまず認めないとします。同様に、ある1点から 紐を結んで、コンパス代わりにするといったこともひとまず禁じます。もしも盲人が、視覚的情報なしで、円の概念にいたり、またコンパスを創ることができた時にその使用を認めます。)

盲人にとって、距離の概念は、聞いたり、触ったりして
獲得されるものでなければなりません。

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なにか、二本の、まっすぐな棒をもってきて、その二つを手でなぞって
長さを比べ、同じ長さという概念にいたり。距離感を獲得していくものと思われます。

したがって、円の数学的定義さえ知っていれば
一応われわれと同じ円を構成することが出来ます。

次に 円盤ができたとします。
大きさは半径1メートルとします。
この円盤が円盤であることは、われわれは見ればすぐにわかりますが
盲目の幾何学者にとってこの円盤が、「円であり 楕円ではない」ということが
どのように見分けがつくだろうかということを考えます。

なにせ盲目の幾何学者は、触ることと聞くことでしか
その実態を認識できません。

二本の棒の長さを比べた時のように
なでるしかないのです。
半径1メートルもある円盤なので
なでながら、歩いて、元に戻ってこなければなりません。

はじめに、円盤のどこかに、触ったらそれとわかる
スタートのしるしを付けておきます。

なでながら、元のしるしのところに戻ってこれたなら
少なくとも、その物体(円盤)の外周が閉じていることはわかります。

さらに、その物体(円盤)の外周の曲率が
すべて凸であることもわかります。
凸凹はなでながら、歩く向きの違いでわかるはずだからです。

つぎに、その物体(円盤)の内部に穴が開いているか
どうかを調べなければなりません。
手が届く範囲では、触って確認できますが
届かない時にどのようにして調べることができるでしょうか?

盲目の幾何学者は、見ることはできませんが
聞くことができます。
その物体(円盤)を叩くことによって
その物体の固有振動数を測定することにより
穴が開いているか、いないかを決定できます。

この問題は

「太鼓の形を聞きとれるか」

というMark Kacの有名な論文で提起され

「太鼓の音から、その面積、周の長さ、穴の数が聞き取れる」

ことが示されています。
したがって、穴の数も、盲目の幾何学者は知ることができます。

参考文献:漸近挙動入門

あとは、曲率が一定であることがわかれば
それは円だということがわかります。

どのようにして曲率を測定するか?

ここで、盲目の幾何学者は、円盤の淵を棒で叩いて
その反響音を聞きました。

そして、一つの命題を立てました。

命題1

円盤のすべての周上で反響音が同じである時
円盤の周の曲率は一定である

そして この命題を元に
円の構成法を 思いつきました

命題2

単連結の板の淵すべての点で同じ反響音になるように
板を削っていくと
その板は円盤に近づく

このような幾何学が
盲人の考えるであろう幾何学であるように思えます。

空間認識がない盲人が形というものをどのように認識するでしょうか?

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